秋が深まる頃、七五三のお祝いで神社を訪れる家族の姿は日本の伝統を色濃く映す美しい風景のひとつです。大切なお子さまの晴れ姿を引き立てるために、ご自身もきものを着て参拝したいとお考えのお母様も多いことでしょう。
しかし、現代ではきものに触れる機会が少ないため、きもののマナーとしてNGな着こなしをしてしまう可能性も。そこで今回は、七五三で失敗しない!母親が抑えておきたい、きものの選び方やヘアメイクのポイントなどをお伝えします。

きもの選び・3つの基本マナー
七五三は子どもの成長を祝う伝統行事。主役は子ども。その姿を見守る母親のきものには「格を守る」「主役を引き立てる」「家族全体で調和する」という基本マナーがあります。
母親だけでなく、父親、祖父母も同様です。子どもが和装の場合は、親、祖父母は格を下げた略礼装のきもの(2を参照)を選ぶのが一般的です。
よくあるNGが、母親が華やかすぎる訪問着を着てしまうケースです。金銀糸をふんだんに使った豪華すぎる訪問着や、目を引く大柄の意匠は、子どもの可愛らしいきものよりも目立ってしまい、バランスを欠きます。母親の立場では「控えめで上品」「格を守る」ことが最優先と心得ましょう。
母親にふさわしい略礼装のきもの
訪問着
一般的なのが訪問着です。肩から裾に柄が続く絵羽模様で仕立てられており、フォーマル度が高く、七五三や入学式・卒業式、結婚式の参列など幅広く使えるきものです。
ポイント
明るく上品な地色を選ぶと写真映えし、母親らしい落ち着きを演出できます。縁起の良い柄を選びましょう。
附下
訪問着に次ぐフォーマル。模様の格は訪問着より控えめですが、七五三の場には十分ふさわしいきものです。
ポイント
訪問着よりも控え目なものが多くあるため、華やかにしすぎたくないという方に向いています。
色無地
白地、黒地以外の一色染めの無地でセミフォーマルなきものです。一つ紋をつけることで格が上がります。
特徴
帯や小物で華やかさを加えることで、晴れの日らしい装いにできます。落ち着いた雰囲気を好む方や年齢を重ねた母親にも適しています。
江戸小紋
小紋や紬は普段着にあたるため儀礼の場には不向きですが、例外とされているのが江戸小紋です。中でも、江戸三役(鮫、行儀、通し)はきものの格が高くなり、礼装向けとして着用できます。
特徴
細かな文様が特徴です。淡い色、明るいトーンの地色を選びましょう。
七五三コーデのポイント
季節感を意識した色合わせを
きものは四季を映す衣。七五三は秋の行事ですから、春の桜満開を思わせる意匠は違和感を与えます。秋らしい暖色系や母親らしい落ち着きや温かみを感じさせる柔らかい色合いがおすすめです。
襟・帯・小物で品格を調整する
着物はトータルコーディネートで品格や雰囲気が決まるので、半襟や帯、小物選びも重要です。訪問着や色無地に華やかさをプラスする役目もあります。
半襟は白
カジュアルな柄半襟やレースの半襟は、七五三の正式な場にはそぐいません。白の半襟で清楚さを表現するのが基本です。
帯は袋帯を合わせる
名古屋帯は略式。七五三には格のある袋帯を合わせるのが望ましいです。
草履やバッグはフォーマル用を
きものや帯の色合いに合わせ、カジュアルなものではなくフォーマル用を選びましょう。
ヘアメイクのアドバイス
きもの姿を完成させるのはヘアとメイクです。撮影スタジオや美容室で着付けやヘアメイクをお願いする場合、どのようなオーダーをすればよいのでしょうか?
現場のヘアメイクさんにアドバイスをお聞きしました。
タイパを考え、母親の仕度はなるべくシンプルに
お子様とお母様、どちらも着付け・ヘアメイクを行う場合、現場のスタッフ数にもよりますが、朝から多くの時間が必要となります。お子様の体力や集中力を考えますと、お仕度の時間は少しでも短い方がいい。お母様はメイクをご自宅で済ませ、着付けと簡単なヘアアレンジだけをお任せいただくと時間短縮になります。
生花は避ける。崩れにくいヘアアレンジが◎
きものと同様、主役はお子様ですので、華美になりすぎず、清楚で上品な和装ヘア、ナチュラルで優しい表情に見えるメイクをおすすめしています。
生花を使ったヘアアレンジのご相談もありますが、控えめであればマナー的には問題ありません。しかし、お仕度が終わり、慣れないきもの姿でお子様のお世話をしながら神社まで移動する間に、生花がしおれてしまったり、髪型が崩れてしまう可能性もあります。
ロング〜ミディアムヘアの方は、サイドをねじる、編み込むなどしてから低い位置でまとめたシニヨンヘアにすると崩れにくく、上品な印象に仕上がります。ワンポイントに、かんざしなどの飾りを付けると素敵です。
着付けが乱れていないか確認を
せっかく良いきものを選んでも、着付けが乱れていると台無しです。記念写真にも残るので、後悔しないためにも以下のチェック項目で最終確認をしましょう。
- 衿合わせがゆるんで胸元がだらしなく見えていないか
- 帯の位置が低すぎていないか
- おはしょりが不自然に余っていないか
- 裾線が斜めになっていないか
まとめ:お子様や家族を着付ける喜びが学べます
今回は、七五三で失敗しない!母親が抑えておきたい、きものの選び方やヘアメイクのポイントなどをお伝えしましたがいかがでしたか?
きものは知識と技術があってこそ、美しく着こなせるものです。「長沼静きもの学院」では、七五三のような晴れの日にふさわしい装いの選び方から、実際の着付け、所作まで丁寧に学ぶことができます。
また、着付師育成科では、七五三のみならず、成人式、卒業式、結婚式など、お子様の人生の節目に「きものを着付けてあげたい」と受講される方も多くいます。
自分できものを着る喜び、大切な人に着付けてあげる喜び。
そのどちらも学ぶことができる当院では無料体験レッスンを開催しております。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にご来校ください。