夏のお出かけに欠かせない、涼やかな浴衣。汗を吸い込んだり、食事で汚れが付いたりと、意外と繊細なお手入れが必要です。
着用後のケアをしっかり行えば、来年も美しく着ることができます。
今回は、ご自宅でできる浴衣の洗濯方法と、型崩れやシワを防ぐ収納のコツをご紹介します。

浴衣のお手入れは「洗濯表示」からスタート
まずはタグを確認
浴衣を洗う前に、まず確認したいのが洗濯表示。素材によっては家庭での洗濯が向かない場合もあるため、表示に従うことが大切です。

浴衣には木綿・ポリエステル・麻・絞りなど、さまざまな素材が使われています。まず確認したいのが、内側に付いている洗濯表示(タグ)です。
洗濯機マークや手洗いマークがある場合は、基本的に自宅でのお手入れが可能です。とくに木綿やポリエステル素材の浴衣は比較的扱いやすく、丁寧に洗えば長持ちします。
ただし、すべての浴衣が自宅で洗えるわけではありません。心配な点がある場合は、以下のような浴衣に該当しないか確認してみましょう。
こんなときは迷わずクリーニングへ
浴衣の洗濯表示に「家庭洗濯不可」のマークがある場合や、以下のような不安があるときは、無理に自宅で洗わず専門のクリーニング店に相談するのがおすすめです。
- 風合いを損ねたくない高級素材の浴衣(絞り・綿紅梅・麻素材など)
- 濃い色合いや多色使いで色落ちが心配な浴衣
- 刺繍・金箔・ラメなど特殊な加工が施された浴衣
生地の傷みや色落ち、風合いの変化が心配なときは、プロの手で丁寧にメンテナンスしてもらうのが、浴衣を長く大切に着るための秘訣です。
自宅で洗う場合の手順とポイント
家庭で浴衣を洗う際は、素材に合った方法で優しく扱うことがポイントです。正しい手順を知っておけば、安心してお手入れできます。
基本は「手洗い」がおすすめ
浴衣を長く美しく保つには、やさしい手洗いが理想的です。
- 浴衣を本畳みにする(折りたたんだ状態で洗います)
- 洗濯桶や浴槽にぬるま湯を張り、中性洗剤を溶かす
- 浴衣をそっと浸け、両手でやさしく押し洗い
- 汚れが気になる部分は、軽くつまみ洗い
- たっぷりの水で素早くすすぐ
- 洗い終えたら、ねじらず軽く手で絞る
生地をこすったり、強く絞ったりすると型崩れや縮みの原因になるので注意しましょう。
洗濯機を使う場合のポイント
洗濯機で洗う場合は、できるだけ素材への負担を減らす工夫が必要です。
- 浴衣を本畳みにし、ネットに入れる
- 中性洗剤を使用し、「手洗いコース」または「おしゃれ着コース」を選択
- 脱水は30秒〜1分以内に設定
洗濯機で浴衣を洗う際は、いくつかの注意点を守ることで生地への負担を最小限に抑えることができます。まず、必ず洗濯ネットに入れるようにしましょう。ネットに入れずに洗うと、生地がこすれて傷んだり、縫い目が緩んだりする原因になります。
また、他の衣類と一緒に洗わず、浴衣単体で洗うことも大切です。とくに色移りや摩擦によるダメージを防げます。
脱水時間については、できるだけ短時間で設定しましょう。目安は30秒から1分程度。脱水しすぎるとシワが付きやすくなるほか、生地の傷みや型崩れにもつながるため注意が必要です。
型崩れや色あせを防ぐ浴衣の「干し方」
洗濯後の浴衣は、風通しの良い日陰で「陰干し」にします。直射日光は色あせや縮みの原因になるため避けましょう。
着物用ハンガーがあれば理想的ですが、なければ物干し竿でもかまいません。干す前にシワを軽く整え、袖を少し広げて吊るすと風が通りやすくなり、自然にシワが伸びてきれいに仕上がります。
このひと手間で、アイロンを使わずに美しい仕上がりが期待できます。
シワや型崩れを防ぐ収納方法
浴衣は、しっかり乾かしてから畳むのが基本です。湿気が残っていると、カビや黄ばみの原因になります。
必要に応じてアイロンをかける際は、洗濯表示があれば必ずその指示に従いましょう。一般的には、綿や麻は高温、ポリエステルは低温に設定し、あて布を使います。ただし、絞りの浴衣はシボがつぶれるためアイロンは避けてください。
収納の際は、たとう紙に包んで衣装ケースなどへ。防虫剤を入れる場合は直接触れないようにし、湿気や温度変化の少ない場所、押し入れの中段〜上段などにしまうと安心です。
まとめ
浴衣を長く美しく楽しむためには、洗濯前のタグ確認から、干し方、収納に至るまで、それぞれの工程を丁寧に行うことが大切です。洗濯表示に従ってお手入れをすることで、生地の風合いや色合いを損なわずに済みますし、心配なときは無理に自宅で洗わず、素材や装飾に応じてクリーニングを選ぶことも大切な判断です。
陰干しや適切なアイロンがけ、たとう紙での収納など、ほんの少しの心がけが、来年も気持ちよく袖を通すための下準備になります。
長沼静きもの学院では、着付けの技術だけでなく、きものや浴衣を大切に扱うための知識や所作も大切にしています。美しい装いを末永く楽しむために、日々の丁寧なお手入れも、きものの魅力を深めるひとつの時間です。