
きものには、季節の移ろいに合わせて装いを整える「更衣(ころもがえ)」の文化があります。
見た目の美しさだけでなく、気温や湿度に応じて快適に過ごすための知恵として、古くから受け継がれてきました。
今回は、5月から9月にかけての更衣(ころもがえ)の流れを、当学院の考え方をもとにわかりやすく解説します。
初めての方でも迷わないよう、着物・長襦袢・小物の選び方まで丁寧にご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
きものの更衣(ころもがえ)とは?季節に寄り添う美しい習慣
きものは季節によって素材や仕立てを変えることで、四季を感じながら装う日本ならではの文化です。更衣(ころもがえ)は単なるルールではなく、自然と調和するための大切な知恵でもあります。
更衣(ころもがえ)の歴史と意味
更衣は、平安時代の宮中行事として始まりました。季節ごとに衣服を替える習慣は、時代とともに発展し、「袷・単衣・薄物」という区分へと整理されていきます。
現在でもこの考え方は受け継がれており、季節を大切にする文化として、きものの装いに深く根付いています。見た目の美しさだけでなく、季節への敬意や心配りを表現する意味もあります。
現代の更衣(ころもがえ)は気温に合わせて柔軟に
洋服が主流の現代では一般的には6月1日・10月1日が更衣(ころもがえ)の目安とされていますが、近年は気温の変動が大きいため、暦よりも体感温度を重視することが大切です。
無理に季節を合わせるのではなく、快適さと見た目のバランスを意識した着こなしを心がけましょう。
月ごとでわかる|きものの衣替えの基本
それでは、5月から9月にかけての具体的な更衣(ころもがえ)の流れを見ていきます。季節の変わり目はとくに調整が重要になるため、ポイントを押さえておきましょう。
5月〜6月|単衣へ移行する時期
初夏に向かうこの時期は、春から夏への移行期間にあたります。気温に合わせて、少しずつ軽やかな装いへと変えていきましょう。
5月頃から袷のきものに単衣の長襦袢を合わせ、半衿は袷用のまま着用します。見た目はまだ春らしさを残しつつ、内側で涼しさを取り入れるのがポイントです。
6月に入ると、着物が単衣へと変わります。長襦袢は気候に合わせて徐々に夏の長襦袢に切り替えていきます。帯は6月上旬は冬用を使用し、半衿・帯揚げ帯締めも帯に合わせて冬用を使用し、全体のバランスを整えます。6月下旬からは帯・半衿、帯揚、帯締も夏物に変えます。
この時期は、夏へ向かう準備段階として、少しずつ軽やかさを取り入れるのがポイントです。
7月~8月|夏の装い(薄物)
7月になると、本格的な夏の装いへと移行し、長襦袢や半衿、帯・帯締めもすべて夏仕様に変わります。
透け感のある「薄物」を中心とした装いになります。絽や紗、麻などの素材を取り入れることで、見た目にも涼しげな印象を演出できます。
この時期は、着心地の軽さだけでなく、見た目の涼やかさも重要です。透け感や色味、素材の質感を意識することで、季節感のある美しい装いに仕上がります。
9月|夏から秋への調整
9月は夏と秋の境目にあたるため、装いの調整が重要な時期です。
上旬はまだ暑さが残るため、帯や帯揚げ、長襦袢は夏用の透け感のある素材を使用し、半衿も絽などの涼しげなものを合わせます。
一方で、下旬になると秋の気配が深まるため、帯や帯揚げは冬用へと切り替えます。半衿も塩瀬など、透け感のない素材を選ぶと季節に調和した装いになります。
このように9月は、気温と見た目の両方を見ながら、少しずつ秋へと移行していくのがポイントです。
長襦袢・小物・季節の装いまとめ
きものの更衣(ころもがえ)では、着物だけでなく長襦袢や小物の選び方も重要です。細かな部分を整えることで、全体の印象がぐっと美しくなります。
長襦袢の選び方と季節ごとの特徴
長襦袢は季節ごとに仕立てや素材を変えることで、着心地が大きく変わります。
寒い季節は本来袷仕立てですが、近年は暖房環境の影響もあり、軽やかな仕立てが主流になっています。中間の季節には単衣仕立てが活躍し、楊柳など通気性のよい素材もよく用いられます。
盛夏には、絽や紗、麻などの涼素材を使用した単衣仕立ての長襦袢が基本です。汗ばむ時期でも快適に過ごせるよう、素材選びが重要になります。
半衿・帯・帯締めの合わせ方
半衿や帯、小物は、季節感を表現する大切なポイントです。
透け感や厚みを意識することで、同じ着物でも印象が大きく変わります。とくに6月と9月は夏と冬の要素が混ざる時期のため、バランスを見ながら調整することが大切です。
小物は面積が小さい分、さりげなく季節感を取り入れやすい部分でもあります。迷ったときは、小物から調整すると自然な着こなしになります。
季節ごとの装いの目安
きものの装いは、大きく分けると以下のように整理できます。
・冬(12〜2月)
袷のきものに羽織やコートを重ねる、あたたかさを意識した装い
・春、秋(3〜5月・10〜11月)
袷で、帯付きのすっきりとした装い
・初夏初秋(6月・9月)
単衣を中心に、帯や小物で季節感を調整する装い
・盛夏(7〜8月)
薄物を基本に、透ける素材で統一した涼やかな装い
この流れを知っておくと、年間を通して自然で美しいきものの着こなしの目安になります。
まとめ
きものの衣替えは、季節の移ろいを感じながら装いを整える、日本ならではの美しい習慣です。
決まりを意識しつつも、気温や体感に合わせて柔軟に取り入れることで、より心地よくきものを楽しむことができます。とくに近年は、無理なく自分らしく着ることが大切にされています。
「なんとなく難しそう」と感じていた方も、基本の流れを知ることでぐっと身近に感じられるはずです。
長沼静きもの学院では、こうした季節ごとの装いも含め、初心者の方にもわかりやすく丁寧にお伝えしています。実際に手を動かしながら学べる無料体験レッスンもご用意しておりますので、ぜひお気軽にご参加ください。